うしろから、そっと
田中が俺にプリントを渡すために振り向く。
黒髪が揺れて、風が伝わる。
ふわっと香るちょっとだけ甘いシャンプーの匂いが、俺の心をくすぐる。
あ、今プリントが手に当たった。
その後、今度は俺に当たらないように、落ちないようにそっとプリントを置いた。
俺に気使わないで、叩き起こしてくれてもいいのに。
優しいんだな。
起こすのがめんどくさいだけかもしれないけど、今は田中が優しいってことにしておこう。
しばらく間があって、田中がまた前を向く。
このシャンプー、何の匂いなんだろう。
好きな匂いだ。