レモンスカッシュ



ゆっくりと流れてゆく時間に胸の鼓動が速くなる。


…だって。

だって近すぎるんだもん。


遠矢の狙いは私の傘らしい。

昼から急に雨が降ったので、遠矢は傘を持って来ていないらしい。

それなら貸す!って言ったんだけど、送ると言われ簡単に断られてしまった。

相合い傘。

その言葉が頭に浮かび、なんだか恥ずかしくなってしまった。


「彩乃?」


それから、名前で呼ばれるのもなんだか恥ずかしい。

普段、男子から名前で呼ばれることなんてないから。


「話聞けっつーの。
一人で話しててもつまんねーだろうが。」


「…ごめん。」


何素直に謝ってるんだ、私。

遠矢が勝手に一人で喋ってるだけなんだから。

私が謝る必要ないのに。


「彩乃って本当可愛いよな。」


「なっ。
可愛くないわよ!」


「そういうとこも可愛い。」


さっきから可愛い可愛いって。

からかわないでよね。

…照れるでしょ。


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