レモンスカッシュ



少し早めに家を出て、駅に向かう。

家に居ても落ち着かないのと。

…早く遠矢に会いたい。


私、本当に遠矢を好きになっちゃったんだね。


駅に着くと、すぐに目に入る。

どんなに人がいてもきっと見つけられる。

まぁ、目立ってるからね。

みんな遠矢を見ている。

もう少し経つと、私もみんなと同じになる。

もう少し…。


「…彩乃?」


「遅くなってごめんね。
待った、よね?」


「…。」


何も答えずに遠矢は歩き出してしまった。

いつもみたいに何か言ってくれたりしない。

冗談でいいから、可愛いって遠矢に言って欲しかった…。

先を歩いて行く遠矢にもう追い付かない。

それが分かると、視界が歪んで来た。


全然デートじゃないよ…。

遠矢のばか…。


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