双華の香



「…なるほど、色気か」



「ひどいですよねー人のこと馬鹿にして!」



「しかし…」



そう呟いて、こちらをじっと見つめる欄菊さん



「…あらかた、間違ってはいないようだがな」



「!

欄菊さんまでっ」



「ぷっ…ははは!」


「なっ!からかったんですか!?」



そうしてきゃあきゃあ言っている間に月が雲に隠れて


辺りがより一層暗闇に包まれた



「いけない…もうこんなに暗くなっちゃった


みっちゃんが心配してるかも…」




わたしは急いで立ち上がった




「欄菊さん、聞いてくれてありがとうございました!


あの、わたしそろそろ帰らないと…」



「―――ひとつ、聞く」




欄菊さんの凛とした声が、わたしの言葉を遮る




「おまえは、その実という男に惚れているのか?」



「………へ?」



緊張しながら聞いていると、欄菊さんはとんでもないことを聞いてきた



「ま、まっさか!!」



「?

違うのか?」



「違うもなにも、みっちゃんは惚れるとかそんなんじゃなくて!


小さい頃から、わたしのお兄ちゃんみたいなもので!」



自分でも動揺しているのがわかる



確かにみっちゃんのことは大好きだけど、そんな風に考えたことはなかった






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