双華の香






「…そうか」



それだけ言うと、欄菊さんはすっと立ち上がり正面を向いた




「それだけ聞ければ十分だ


わたしは随分、おもしろい妹を持っていたものだなぁ」



「…ぇ…」



欄菊さん…

今、なんて…




「何のことだかさっぱりわからないという顔をしているな


仕方あるまい。まさか本当にいたなんて、わたしもこれでも驚いている」



そう笑う欄菊さん


これは…もしかして…!




「欄菊さんって、みっちゃんのお姉さんなんですか!!?」



「…………はぁ?」



何やら固まる欄菊さんをよそに、わたしは興奮しながら話し出す



「そうなんですね!!だからわたしがみ っちゃんを好きかなんて聞いたんだ!


弟のことを心配して、なんて素敵なお姉さんなの!!」



「ぇいや…おい」



「でも本当に心配しないでくださいね!


さっきも言った通り、みっちゃんはただのお兄ちゃんみたいなものですから!


それにしても、みっちゃんもお姉さんがいるならいるって教えてくれてもいのに…」




「人の話を聞けっ!!!」




「きゃわあっ!!」



突然大きな声を出した欄菊さんに、驚いて上擦った声を出してしまった



「まったく…わたしは『妹』といっただろう」



「へ…?」



「はぁ…本当にこんなのがわたしの妹なのか…信じられん」



「………」




「もうわかっただろう、お前はわたしの妹だ


――そして、わたしはお前の姉だ」



欄菊さんが信じられない言葉を言い切ったとき、ちょうど隠れていた月が顔を出した






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