双華の香



「わたしはずっと、この下町で育てられました」



「知っている」



「だから、高貴な方の身のこなしは何一つできません


そんなわたしが姉様と入れ替わるなんて、無理があります」



たとえ容姿がそっくりでも、身のこなしが何もできなければそんなのすぐにばれてしまう



きっと、姉様だってそれは困るはず…




「そのことなら、心配はいらない」



「…へ…」



「ふふ、まぁいずれわかる」




軽く笑うと、姉様はまた前を向いてしまった




「―――5日後、日が真上に昇る頃、この川でまた会おう」



それまでに心と身の回りの整理をしておけ、




それだけ言い残すと、姉様は風切さんと共に夜の闇に消えていった…





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