双華の香
「勝手に見てはいけないと思いつつ、わたしは手紙を読んだ
それは、下町に住むひとりの女からの手紙だった」
「…女から?」
「あぁ…それも母上宛ではなく、父上宛に
そこには父上の身を案じる内容と、他愛もない話が綴られていた…」
ふっと、視線を下げる
「…そして、わたしと2つ歳の離れた少女の話も」
「…!」
「わたしも、はじめは理解できなかった
なぜ身分の低いこの女が、父上と親しい言葉を交わすのか
なぜ父上に、自分の娘の話をしているのか」
だが、少し考えれば簡単なことだった
「…その娘が、父上との間にできた子だからだ」
――――それが、『小春』
あの憎いくらいに可愛らしい、同じ顔を持つわたしの妹