双華の香
「小春の存在を知ったとき、不思議なことに
わたしは会いたいと思った」
自分に妹がいる
「それと同時に、父上が心から愛した女とは母上ではなくこの女だと確信した
そして小春は、この世に生まれてくることを強く望まれた子だと思った」
手紙が届いてから既に数年という時間か経っているのにも関わらず
わたしはその手紙を、頼まれた書と共に父上に渡した
父上は手紙を見るなり驚いた顔をしたが、何事もなかったようにそれを受け取った
「そのとき理解したのだ
父上はわたしのことも愛していないのだ、と」
わたしは母上と同じだ、と
父上の1番はわたしではなくあの女
そしてその娘なのだ、と
「…欄菊」
「だからある程度の歳になり、わたしひとりでも人を動かせるようになったとき
真っ先に女と娘を調べさせた
…女は既に生きていなかった
だがそこで小春という一人の娘を見つけたのだ」