幼馴染の窓 R18
窓越しに目が合って、私が、見られた、と気づいた時には遅すぎた。



幼馴染で隣人の男の子、昭の表情は既に固まっていた。
怖すぎて、すぐ目線を外した。

そんな顔をしないで…お願い。
私が悪いから。


そばにあったバスタオルを拾って、それを急いで巻きつけて、玄関に出て、弁解をしようと思って、口を開こうとして、


何を言ったらいいのか、分からなかった。
言葉が出てこなかった。



「言わないで」と言うのがいっぱいいっぱいだった。



私と昭は、恋人同士じゃない。
だから、
「裏切ってごめんなさい」はおかしい。
「変なものを見せてごめんなさい」
なら、正しかったかもしれない。



でも、…でも。
謝れなかった。
私が自分で引き起こしたことを、だめだと知りながらやったことを、
どうして、謝れるの。
…許しを請うことができるの。



昭は、いつも見慣れたパーカーを着ていた。
そのパーカー、お気に入りなんでしょう?
知ってる。
あなたが、何が好きで、何が嫌いか、分かるよ。


分かってるから、今何を言いたいのかも、分かるよ。
さっきから動く唇。
私に聞きたいことがあるんでしょう。


昭がビニール袋を落とした音が耳に届いて、隣の家に昭が消えたとき、ようやく、今日の寒さが身を刺した。
バカだな、私。
バスタオル一枚で出てくるなんて、ほんとバカ。
出てきたのに、何も伝えられないなんて、もっとバカ。


私が震えている理由は、
昭が何も言ってくれなかったから?
バスタオル一枚で出てきちゃったから?
それとも。


「咲」
と、呼ぶ声がした。


「寒いから、戻っておいで。」



この声が、昭だったらいいのに。
昭よりだいぶ低くて。
あの腕の中は、…雪(せつ)の腕は、甘くて、悲しい。
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