自由恋愛の秘密
「朝一番にすること。」
「うわ,なんか現実的。」

 『ジンギスカン』を一口食べて,箸を口にくわえたまま,萌はポツリと言った。

「何が?ジンギスカンが?北海道感じさせる?」
 
 春はもうすぐといいながら,うちの大学の食堂では,『北海道フェア』っていうものをやっていて,それがなかなか春を感じさせない一つの原因だと思う。
 
 北海道=寒いっていう連想を呼び起こさせるから。
 
 なーんて,ただ単にまだ気温が低いからっていうのもあるんだろうけどね。

「えっ,違うよ。…ほらさー,ついに来たって感じでしょ,四年っていう,最高学年っていう…年老いるっていう?」
 
 萌はそう言いながら,箸でラム肉をつついて食べようとしない。

「ああ…そうだねー。夢の学生生活も最後の年になりましたってことだね。」

「まああたしは大学院行くけどね。咲は?あれ,行かないんだっけ?」
 
 だから,この前も言ったじゃん。萌は本当に人の言ったこと覚えてないんだから。

「たぶん行かないよ。でもだからってどうしたいってのもない。」
 
 いらっときて,即座に萌の目線からそらす。

< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop