自由恋愛の秘密
「あーそう言ってたよね,ごめん。でも,どうすんの?四年になっちゃったら,就活しなきゃだし。まあ,それでも遅れてるんだろうけど。ほら,経済の美香いるじゃん?もうとっくに就職先決まったらしいよ。そんないいとこでもないらしいんだけどね。」
 
 萌はつついていたラム肉を,やっときちんとつかんで,口に含む。

「ふーん。じゃああとは卒論だけかあ。いいなー遊び放題の一年じゃん。」
  
 私は眼鏡をはずし,ラーメンをすする。

「なんかでも結婚するとか言ってたけどね。ほら,一年のときから付き合ってるやついたじゃん,えーと,名前忘れたけど…サッカーやってるやつ。咲,かっこいいって言ってたじゃん」

「え?かっこいいなんて言ってないよ。むしろあの人あたし嫌いなタイプだし。誰かと間違ってんじゃないのー?」

「あれ?そうだっけ。誰かかっこいいって言ってたような…。ま,とにかく,結婚したいとか言ってたよ」

「ふーん,結婚ねぇ。早いでしょ,まだ人生決めるには。…あっ,わかった,かっこいいって言ってたのってさあ,あの子だって,めっちゃ背高いあの子…」
 
 春休み中だから,食堂にはあまり人がいなくて。
 
 私たちの笑い声が,隅々まで行き渡る。
 
 なんかそれがちょっと寂しい感じ。
 
 あと一年で卒業しなきゃいけないっていうのが実感されるような静けさで,なんか寂しい。
 
 残りの時間の中でもっと遊んで,もっと恋愛したいなあ…

                 
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