自由恋愛の秘密
「ごめんってばー!何ー?」

ギターの音で消されているのか,無視しているのか,私の大声が智光に届かない。

「智光,ごめん,怒った?」

 …前はこんなことですぐ怒らなかったのに,最近ちょっとしたことで私たちはすぐギクシャクしてしまう。

 友達同士で恋愛観を語っていたときは,何時間話していてもきりがなかったのに。ずっと笑いがたえなかったのに。

 恋人と友達の境界線って,一度飛び越えてしまうと厄介だな…

 私は,智光に謝ることをあきらめて,冷蔵庫を開ける。

「あっ」

 いつものアレが,入っていない。

 …あーそうだ,昨日で切らしてしまったんだ。今日バイトの帰りに買ってこようと思ってて,すっかり忘れてた…

 私はしばらくボー然として冷蔵庫の前に突っ立ってしまう。

 そこでBGMのように流れていたギターの音色が止まり,智光がこちらに向かってくる。

「お前冷蔵庫開けたままにするな」

 智光の声で,私は我に帰る。

「…どうしよう,パイナップル買ってくるの忘れた…」
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