トリプルトラブル
 小学校は別だけど、保育園から高校まで一緒だった沙耶は、正樹にあるトラウマを抱いていた。

本当は正樹が怖かったのだ。


でも結城智恵の影響で突然恋に堕ちたのだ。


『本当の出身地はコインロッカー』
結城智恵が言ってた本当の理由も知っていた。

正樹を好きだからこそなのだと。


だって結城智恵の視線の先には何時も正樹がいたからだった。


そして……
沙耶も気付いたのだ。
正樹を思う自分の心に……


でも沙耶は正樹の本当の気持ちを知ることになる。


正樹も結城智恵が大好きだと言うことに。


結城智恵と正樹はそれとは知らず、相思相愛だったのだ。


だから沙耶は恋しい気持ちを封印せざるを得なかったのだ。




 あの美紀の告白を、沙耶は冷静に聞いていた。

美紀を応援したいとも思えてきた。


思い出は思い出として、心の中に閉まっておこうと思えるようにもなった。


嫉妬から、正樹にお見合いを勧めた。

でもそれによって、未だに正樹を思う気持ちに気付いてしまった沙耶だった。


(――本当は今でも大好きなのよ。

――アナタを……
お義兄さんを……)


でも沙耶には家族が居る。
愛する旦那様と子供達も居る。

沙耶は複雑な心境で、正樹を見つめていた。




 正樹は高校総体の、軟式テニス地区予選の応援に行った。

その時、隣のコートでプレーをしていたのが珠希だった。


その技術力に圧倒され、拍手喝采を送った正樹。

非の打ち所もない前衛。
珠希は高校生でありながらプロ級だった。

自校の応援そっちのけで珠希に見入った正樹。
その正樹に一目惚れした珠希。

二人はこうして恋に堕ちたのだった。


その恋のキューピットになったのが沙耶だった。

望んでもいないのに……

こうなることなど予想もしていなかったのに……

結果的に沙耶は、珠希と正樹の出逢いを演出したことになったのだった。


沙耶も姉の後を追い、ソフトテニスの前身軟式テニスの道に入ったのだった。

偶々同じ日に姉の珠希も試合をしていたのだ。

インターハイの予選会に一年生が出場する。

沙耶もそれほど凄い名プレーヤーだったのだ。


正樹が応援に行ったのは、沙耶の所属しているクラブだったのだ。

それも沙耶が頼んで……

だから沙耶は、ずっと後悔していたのだった。



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