トリプルトラブル
 「長尾君……」
私は思わず言っていた。


三人は卒業したことで浮かれたのか、元高校球児らしからぬ頭だった。


「その頭どうしたの? 羽目外し過ぎなんじゃないの?」
私はストレートにぶつけていた。


「あ、これは大が……」

私は直樹君の言い訳を聞いて、大君を睨み付けていた。


「昨日ふざけ合っていたらこうなったんだよ」
大君は盛んに頭を掻いていた。


「月末に母の七回忌があるんだ。その時までには元に戻すよ」
今度は秀樹君が言い訳する。


「そうだよね。お母さんが驚いちゃうから、早目がいいね」

私は無賃乗車と言われている状況も忘れて、浮かれていた。



 「あれっ、あー君は確か……」


「はい。松宮高校でイッコ上だった中村紫音と言います。あれっ、気付いてなかったのですか?」

私は少しがっかりしながらも勢い良く頭を下げた。


「ねえ君、どうして此処に居るの?」


「さあ……私も何が何だか解らなくて」


「あっ、そうか。引っ越し先から乗って来たっとことか?」
業者の人は言った。


「はい、そうみたいです」


きっと私は長尾家の前を通った時、引っ越し現場に出くわして……

(――ん!?
そのままコンテナに入り込んだ?

――んな馬鹿な!?)

私の頭は益々混乱していた。




 「あー、もしかしたら中村さん。お爺さんに何か頼まれた?」


「え、何をですか?」


「だから俺達の世話をしてくれだとか……」


(――あっ、もしかしたらお手伝いさんか何かと勘違いした?

――どうしよう?

――知らないうちに此処にいた。なんて信じてもらえないだろうな?)
私は本当のことを言うかどうか躊躇っていた。


「あーそうか。爺さんのことだ。俺達に自炊は無理だと思って頼んだのか?」


(――えっ!?)
その言葉に驚いた。
確かに聞いた声だった。
さっきまで思い出せなかったのに……

それは、一つの結論になった。

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