トリプルトラブル
 午後からは社会人野球の練習場に出掛ける。
二人は早めに支度をしていた。
散髪と、お昼をその近所で済ますためだった。


「大、ゆっくり練習出来るな。でも壊すなよ」

秀樹君は出掛ける前に一言掛けた。
まるで大君が怒ること期待しているかのように。


「そりゃどう言う意味だ?」


「いや、別に」

大君をからかうためなのかな?

そう思い直樹君に目をやった。


「……」

自然に目が合い、二人ともそままで見つめ合った。


「何だ何だ。この二人出来ちゃったんか?」
大君がちゃちゃを入れる。


「ちげーよ」
直樹君は慌てて私から視線を外し、そのまま走って行ってしまった。

私は何故か大君を睨んでいた。

大君は肩を竦めて、苦笑いを浮かべていた。




 「あっそうだ」
飛び石の先で、思い付いたように言った後で直樹君は私を手招きをした。


「大には内緒にしておいてね。あのね、帰りに美味しい物買って来るからね。いい、絶対に言わないようにね」
直樹君は、秀樹君とひそひそ話をした後で私に向かって言った。
何故だか二人共に嬉しそうで、何かを企んでいるみたいだった。


(――えっ美味しい物? わぁ何だろう?)

でも私はそんなことより、直樹君が買って来てくれるお土産に気持ちが傾いていた。


(――美味しい物? 大阪名物お好み焼き、それともたこ焼き?)
私の心は既に其処へ飛んでいた。


私があまりにも嬉しそうだったからか?
大君がニヤニヤしながら近付いて来た。


「さっきといい、今といい、お前等熱々だなー」
何を勘違いしたのか、大君は私の顔を覗き込んだ。


「もうキスは済ませたのか?」
そのあまりに大胆な発見に私は心臓が止まりそうだった。


「するわけがないでしょう」
私はキッパリと言い切った。




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