トリプルトラブル
 いやはや、ママらしいと言うか、中村さんらしいと言うか。
でも……
不思議なことにどんどん俺の中で愛しさが広がっていったんだ。

それに反比例するように怖さは無くなっていた。


結婚したいと思ったのは、あの日の朝だった。
中村さんの告白に心が突き動かされたのかも知れない。




 俺はもう迷わないと決めたんだ。
中村さんの存在がどんどん俺の中に広がって……
愛しさも比例したように増していった。

でもそれに反比例するように、ママの存在が気にならなくなっていたんだ。

本当にそうかと言ったら嘘になるけどね。




 中村さんが初恋の人だったと知り、勢いで結婚してしまった。

だから冷静になって考えようとして二段ベッドの上部にいたんだ。

でも爆睡……


中村さんにすまないと思って、慌てて下に降りたら……


中村さんが寝ていた。
その無防備な寝顔は、大阪では絶対に見せなかったものだ。

俺を……
こんな俺を信頼してくれているからだと思った。




 俺と秀樹が寝ていた二段ベッド。

確かにあのベッドの下はママの仏壇だ。

でも、当のママは今目の前にいる。
中村さんの中にいる。
だから尚更燃えた。


パパを愛するためだけに生きたママ。
俺も中村さんにパパのように愛されたかったんだ。


パパもママだけのために生きてきた。
だから尚更美紀を受け入れてやれなかったのだと思う。


背徳……

俺もそうなのかな?
中村さんがママ憑きならな。


でも……
俺は中村さんと恋に堕ちたい。


俺の一生を掛けて守りたい人に出逢えた喜びをママに伝えたかった。

だって、ママが中村さんに憑依したから……

俺は最高のパートナーに巡り逢えたのだから。


ママ、ありがとう。
だから暫くの間、仏壇にいてくれないか。
彼処から俺の本気度を見守ってくれ。


ママ。
俺もパパみたいに……
中村さんを愛したいんだ。




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