トリプルトラブル
「あっ、これはスコアブックって言います。野球の流れを記しておく物です。記憶より記録が大切らしいです」
「記憶より記録?」
「記憶って言うか、思い出は人それぞれで違いますが、これはそれを思い起こさせる記録なのではないでしょうか?」
彼女はそう言いながらもせっせと鉛筆を動かしていた。
「スコアブックには早稲田式と慶応式があるらしいけど、今の支流は早稲田式なのよ」
「ふーん、そうなんだ」
美紀は試合を応援しながらもそのスコアブックが気になって仕方なかった。
早稲田式も慶応式も美紀には解るはずがない。
それでも興味が沸いていた。
「簡単に説明しながら進めますね。上の欄に場所な日時主審など解る範囲で書き込むの」
彼女は指差ししながらも目は試合に向いていた。
「左側に選手の名前。これも解る範囲でね。番号だけでも良いと思うわ」
「番号?」
「ホラ、ピッチャーが一とか、キャッチャーなら二とかあるでしょう? あの番号よ」
美紀はその説明が嬉しかった。
でも彼女の邪魔をしてはいけないと思った。
「ごめんなさい。今は試合に集中して。悪いけど又後で教えてね」
美紀の言葉に彼女は頷いた。
「そう言えば、授業中に皆でネットを調べていてね。秀ニイが急に大声を出したことがあって……」
いけないと思いつつ……
又声を掛けてしまった美紀は、恐る恐る彼女を見た。
「あっ、聞いたことがあります。たしかSFBのことですよね?」
でも彼女は気にする様子もなく、試合に集中しながら答えてくれていた。
「えっ、知っていたのですね」
マネージャー見習いなら当たり前だと思う。
でも少しだけ、ヤキモチに似た感情で彼女を見つめている自分に気付き戸惑っていた。
「ごめんなさい。だってあんまり嬉しそうにしていたから、つい聞いてしまいました」
「授業中に検索するなんてって先生にお目玉もらっていたけどね。そう、そんなに嬉しそうだった」
「はい」
その言葉に美紀は、秀樹が悩んで大きくなったことを感じた。
そして、彼女にジェラシーを感じた自分を戒めながら試合に集中しようと思っていた。
「記憶より記録?」
「記憶って言うか、思い出は人それぞれで違いますが、これはそれを思い起こさせる記録なのではないでしょうか?」
彼女はそう言いながらもせっせと鉛筆を動かしていた。
「スコアブックには早稲田式と慶応式があるらしいけど、今の支流は早稲田式なのよ」
「ふーん、そうなんだ」
美紀は試合を応援しながらもそのスコアブックが気になって仕方なかった。
早稲田式も慶応式も美紀には解るはずがない。
それでも興味が沸いていた。
「簡単に説明しながら進めますね。上の欄に場所な日時主審など解る範囲で書き込むの」
彼女は指差ししながらも目は試合に向いていた。
「左側に選手の名前。これも解る範囲でね。番号だけでも良いと思うわ」
「番号?」
「ホラ、ピッチャーが一とか、キャッチャーなら二とかあるでしょう? あの番号よ」
美紀はその説明が嬉しかった。
でも彼女の邪魔をしてはいけないと思った。
「ごめんなさい。今は試合に集中して。悪いけど又後で教えてね」
美紀の言葉に彼女は頷いた。
「そう言えば、授業中に皆でネットを調べていてね。秀ニイが急に大声を出したことがあって……」
いけないと思いつつ……
又声を掛けてしまった美紀は、恐る恐る彼女を見た。
「あっ、聞いたことがあります。たしかSFBのことですよね?」
でも彼女は気にする様子もなく、試合に集中しながら答えてくれていた。
「えっ、知っていたのですね」
マネージャー見習いなら当たり前だと思う。
でも少しだけ、ヤキモチに似た感情で彼女を見つめている自分に気付き戸惑っていた。
「ごめんなさい。だってあんまり嬉しそうにしていたから、つい聞いてしまいました」
「授業中に検索するなんてって先生にお目玉もらっていたけどね。そう、そんなに嬉しそうだった」
「はい」
その言葉に美紀は、秀樹が悩んで大きくなったことを感じた。
そして、彼女にジェラシーを感じた自分を戒めながら試合に集中しようと思っていた。