トリプルトラブル
 秘密りで始めたトリュフ作り。

でもそれに気付いてソワソワしだす秀樹と直樹。

いくら内緒にしても、甘い香りは隠せるはずがない。
二人はそれだけで浮き足立つ。


冷蔵庫内は既に調査済みだった。


だから、今か今かと待ち望んでいたのだ。


勿論、義理チョコだと解ってる。
でも本命チョコであってほしい。


「えぇーい!!」


「たぁー!!」

一途な願いを込めて……
二階から俄か仕込みの念を送る。


(――もうこうなったら誰でもいい。

――どうか三人の中から選んでほしい。

――親父に取られるのだけは絶対イヤだ!!)

そう……
結局其処に落ち着く。


でも……
何故そうなったのかが判らない。


『大きくなったら、パパのお嫁さんになる』

そんな美紀の言葉を、軽く受け流してきた兄弟。

それが本当はどんなに真剣なものだったかなんて、知るはずもなかったのだ。




 双子の兄弟が同じ人を愛してしまうケースは良くあることだと聞く。

以心伝心。
感覚が一緒なので、同じようなことを考えてしまうそうだ。


でも美紀は……
今まで、何の感情も持ち併せていなかった兄弟だったのだ。

いくら、血の繋がりが無いにしても。


それがチームメイトの大の一言からかわるなんて……


親友の大がライバルとなるなんて……

妹だと思って、意識もしていなかった美紀をこんなに大好きになるなんて……


苦しくて、苦しくて仕方ない。
愛しくて、愛しくて仕方ない。


幾ら愛しても、美紀は別の人を愛している。

血の繋がりのない父親を愛している。


自分達の本当の父親を愛している。


嘘だと思いたい。
何かの間違いなんだと信じたい。
でも……
秀樹も直樹も気付いてしまっていた。

美紀の心の中を……
自分達の入り込める隙間も無いほどに、美紀が愛を貫いている真実を。




 でも……
それは執念とでも言うべきか。
未だにバトルを繰り返している三人。


美紀の正樹への本当の気持ちを知りながら、大はそれでも自分に勝ち目があると信じていた。

長年暮らして来て全てを知っている兄弟よりも、ぶがあると思っていたからだ。


でも一向になびかない美紀に、不安を抱くようになっていた。



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