トリプルトラブル
 それでもまだ、美紀に気持ちを伝えようと息巻いていた。


何故好きになったのか解らない。

突然目覚めた恋に戸惑いながら、直樹に打ち明けた。


まさか……
直樹と秀樹がライバルになるなどと予想もしていなかったのだ。


それでも、クリスマスに長尾家に招待されたことが強みになっていた。

正樹に美紀を任されたと思ったからだった。


三人はそれぞれで悩み、そして運命のバレンタインデーを待つことになったのだった。




 三人三様の恋愛バトル。

それを歯痒く見ていたクラスメイト達。


そしてやっと……
高校野球で大活躍した彼等に応援団も立ち上がった。
でもそれは、美紀が誰を選ぶかと言う賭けだった。


「俺は大に賭ける。何故なら、アイツは先生になると言ったからだ。やはり、将来性があるのは大だと思うんだ」


「私は直樹さんが良いと思う。真面目だもん。それが一番よ」


「私はカッコイい秀樹さんが良いわ」

それは、クラス全体。
いや、学校全体を巻き込んだ騒動に発展して行ったのだった。




 そしていよいよその本番の日。

待ちに待ったバレンタインデーがやってきた。


学校は期末試験後、卒業に向けて週一の登校になっていた。


就職活動や入試の準備などで忙しくなるためだった。


その登校日が偶々その日と重なったのだった。


美紀は、チョコレートの包みを三個用意していた。

勿論、大と秀樹と直樹の分だった。


それを見て、ガッカリする者もいた。

自分も欲しいと、クラスメイトの男性陣は密かに期待していたのだ。


そんな中……
本命チョコは誰の手にと、学友達は誰もが固唾を飲んで見守っていた。




 「喧嘩しないでね」

美紀はそう言いながら、全く同じサイズのトリュフチョコを三人に渡した。


それを見届けて、みんなため息を吐いた。


「勘違いしないでね。本当に義理チョコだから」 
美紀はトドメに、ハッキリそう言いながら渡していた。

美紀自身、このままではイヤだったのだ。

だからワザとそう言ったのだった。



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