トリプルトラブル
「美紀はな、親父を愛しているんだよ」
本当は美紀が誰を好きなのかと言うことを知らないと思い込み、大に告げた直樹。
「えっー!?」
突拍子のない大の声が、クラス全体に広がった。
大はわざと、そう言ったのだった。
「そうか、だからおばさんはあの時……」
直樹に聞こえるように言った後、大はもう一度花火大会の時の沙耶の言動を思い出していた。
『ねえ、あんた達。美紀ちゃんが誰を好きなのか知ってて言ってる訳?』
言ってしまってから慌てて口をふさいだ沙耶。
『あれ私……? 何ていうことを』
そして沙耶はそっと正樹の顔を伺った。
あの日の……
花火大会のルーフバルコニーの出来事を、大は思い出していた。
「そんな馬鹿な……」
大はガッカリした振りをしていた。
「だろ? 俺達だって納得行かないんだ」
直樹は今まで、交わして来たラブバトルが急に虚しく思えていた。
たから大に打ち明けだのだった。
でもクリスマスに正樹から美紀を託されたと思い込んでいた大。
内心、勝ったことを確信していた。
やっぱり駄目かと、俯く秀樹と直樹。
大も真似をした。
三人に冷たい風が吹く。
クラスメートはそう思ったようだった。
みんなが見守るなか、トリプルラブバトルはそれで収縮するかと思われた。
それでもまだあがき苦しむ二人がいた。
美紀が本当は正樹が好きなことは分かっていた。
それでも納得出来るはずがなかった。
もし正樹と結婚したら、同じ誕生日の美紀が自分達の母親になってしまうのだ。
妹を母と呼ばなければならなくなるのだ。
絶対にそれだけは避けたかった。
何故……
自分達では駄目なのか?
兄弟は兄弟で、それぞれに思いを巡らす。
でも結局解るはずがない。
だって美紀自身さえも、気付いてもいないことだったのだから。
沙耶の言葉がなかったら、きっと一生美紀は苦しむはずだった。
でもだからって、今が苦しくない訳がない。
知ってしまった以上……
美紀はきっともっと苦しむはずなのだから。
本当は美紀が誰を好きなのかと言うことを知らないと思い込み、大に告げた直樹。
「えっー!?」
突拍子のない大の声が、クラス全体に広がった。
大はわざと、そう言ったのだった。
「そうか、だからおばさんはあの時……」
直樹に聞こえるように言った後、大はもう一度花火大会の時の沙耶の言動を思い出していた。
『ねえ、あんた達。美紀ちゃんが誰を好きなのか知ってて言ってる訳?』
言ってしまってから慌てて口をふさいだ沙耶。
『あれ私……? 何ていうことを』
そして沙耶はそっと正樹の顔を伺った。
あの日の……
花火大会のルーフバルコニーの出来事を、大は思い出していた。
「そんな馬鹿な……」
大はガッカリした振りをしていた。
「だろ? 俺達だって納得行かないんだ」
直樹は今まで、交わして来たラブバトルが急に虚しく思えていた。
たから大に打ち明けだのだった。
でもクリスマスに正樹から美紀を託されたと思い込んでいた大。
内心、勝ったことを確信していた。
やっぱり駄目かと、俯く秀樹と直樹。
大も真似をした。
三人に冷たい風が吹く。
クラスメートはそう思ったようだった。
みんなが見守るなか、トリプルラブバトルはそれで収縮するかと思われた。
それでもまだあがき苦しむ二人がいた。
美紀が本当は正樹が好きなことは分かっていた。
それでも納得出来るはずがなかった。
もし正樹と結婚したら、同じ誕生日の美紀が自分達の母親になってしまうのだ。
妹を母と呼ばなければならなくなるのだ。
絶対にそれだけは避けたかった。
何故……
自分達では駄目なのか?
兄弟は兄弟で、それぞれに思いを巡らす。
でも結局解るはずがない。
だって美紀自身さえも、気付いてもいないことだったのだから。
沙耶の言葉がなかったら、きっと一生美紀は苦しむはずだった。
でもだからって、今が苦しくない訳がない。
知ってしまった以上……
美紀はきっともっと苦しむはずなのだから。