約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く

67.御陵衛士 -花桜-



「花桜、そっち出来たから持っていって」

「はーい」


瑠花が戻ってきて私たちの生活は、
幕末においての今の日常が戻ってきた。


平穏に見える屯所内もピリピリとした空気が走ってる。


出来上がった朝食を大広間へと運んで並べていくと、
集まってきた隊士たちも手伝ってくれて準備が進められている。



だけどその中に、いつもなら姿を見せているのに今日はいない存在を見つける。



「あれっ、斎藤さんと永倉さんは?
 それに藤堂さん……」


思わずつぶやく。



「あぁ、斎藤と新八は謹慎中だ。謹慎中。
 後で食事、持っていってやってくれ」

「謹慎中?
 何かあったんですか?」


原田さんに尋ねてみる者の、原田さんの機嫌はかなり悪そうで。


「あぁあああ」っといきなり発狂したように声を上げて、
片手で髪の毛をガシガシすると「すまねぇ。他に聞いてくれや。平助の食事はもういらねぇょ」っと
意味深な言葉を残して原田さんは大広間を食事も食べずに出て行った。



大広間を出て再び台所へと戻ると次の食事を瑠花と二人運び出す。



「瑠花、斎藤さんと永倉さんは謹慎で、食事は部屋に運ぶみたい。
 何があったのかな?」


ひそひそと耳打ちするように、今聞いたことを伝える。


「もしかしたら……御陵衛士?」


瑠花のその言葉に、私も学校の勉強で少しだけ耳にした名前を思い出す。


「瑠花……」

「とりあえず、話は後。
 先にご飯運んじゃわないと。

 じゃっ、花桜は斎藤さんのところに。
 私は永倉さんに持って行ってくるね。

 その後は、総司の部屋に運んでくるから」


そう言うと私たちは、わかれてそれぞれの部屋へと向かった。



「斎藤さん、失礼します。
 山波です」



襖の前で正座をして声をかけると中から襖がゆっくりと開いた。



「原田さんに謹慎させられている旨を伺いまして、
 朝餉をお持ちしました」

「あぁ」


そう言って私が手渡したお膳を受け取ると、
斎藤さんは奥の部屋へと進んで、部屋の片隅で静かに正座をして食事を始める。


そんな斎藤さんの姿を私は、ただじっと見つめる。


「山波、まだ何かあるのか?
 用があるなら入れ」

そう言って斎藤さんは私に告げた。


私は静かにお辞儀をして、斎藤さんのいる室内へと入ると、
ゆっくりと襖を閉じた。



「謹慎の理由が気になる。
 そういうところか?」

「はい」


隠しても仕方がないので、思うままに答える。


「門限を破った」


門限破りで切腹になった人たちもいるのに、
斎藤さんはとりあえず謹慎処分でとどめてくれたってこと?

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