約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
68.終焉(やみ)へと続く始まり -瑠花-
京に戻ってきていつもと変わらない日常を過ごしてた。
過ごしてたつもりだった。
だけど総司の体調は少しずつ悪化しているみたいだった。
それでも花桜の稽古は体調の合間を見て、
きっちりとつけてくれていたみたいだけど、
時折、真剣を一切使わずに木刀だけで練習している姿を見かけるようになった。
そんな総司の変化に敏感に気が付いたのは、
副長である土方さん。
「おいっ、岩倉。
最近の総司はどうだ?
変わったことはないか?」
そう言って私の傍に近づいてくる。
「最近は真剣を持たずに木刀で訓練しているところを見かけます」
「そうか」
土方さんはそう言うと、道場のへとゆっくりと足を進めた。
竹刀を持った総司の周辺には、気合の訓練に体力を削られた隊士たちが転がってた。
花桜もそんな総司と向き合いながら、稽古をつけてもらってた。
そんな二人の間にツカツカと入っていく土方さん。
「山波、少し代わってくれ。
書きもんばかりじゃ、体がなまってしょうがねぇ。
総司、ちと相手してくれや」
そう言って土方さんは木刀を持って総司へと向き合った。
だけどよく見ると総司が手にしてる木刀と、
土方さんが手にしてる木刀が違う気がした。
「ねぇ、花桜。
総司と土方さんの持ってる木刀って何が違うの?」
思わず尋ねる。
「あぁ、重さかなー。
土方さんが持ってるのは昔から道場で使ってた真剣と同じ重さの木刀かな。
沖田さんが持ってるのは、隊士たちが練習に使ってる木刀。
やっぱり少し軽い気がしたかな」
花桜がその違いを教えてくれている中も、
土方さんと総司は、何度も何度も木刀を交えている音が響く。
何度も何度も総司が技を繰り出しては土方さんがその剣を受け止めていく。
そして土方さんによって、総司の木刀は総司の手からすっぽ抜けて地面に落ちてしまった。