約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く


「舞ちゃん?」

「舞」



雅姉さまの声に、外に出ていた晋兄は何事かと言わんばかりに私の名を呼んで部屋に入ってくる。




だけど私は、このままここに留まるなんて出来ない。


私は舞。


だけど……晋兄や、雅姉さまが知ってる舞ちゃんとは違うの。
私は……幼馴染の泣き虫舞じゃなかった。



私と同じ、漢字違いの【かがまい】ちゃんの歩む道を奪い取った、そんな存在。
そんなことすら知らないで、ずーずしく、義助を追いかけて晋兄の傍に居続けた。



だったら、この世界に来て私が必死に自分の足で歩き続けてきた道って何だったんだろう。


そう考えたら、もう自分のことなんてどうでもよくて。


私は晋兄や、雅姉さまを振り切るような形で、ふらふらとしながら裸足のまま海辺に向かって歩き出した。



夜の海辺。
砂浜の砂に足を取られて、何度もひっくり返しながら、波が足に押し寄せてきたのを感じて、その場に崩れるように座り込んだ。

何度も何度も押し寄せてくる波の音が昼間とは全く違って耳に届いてくる。

昼間はあんなに安堵できる波の音だったのに、
今はこの波が私のすべてを消してくれそうで。


押し寄せてくる波に、冷たい砂浜に、両手を何度も何度も叩きつけながら、
自分でも何を叫んでるかわからないほどの発狂した声で、何度も何度も泣きながら叫び続けた。



自分を責めることも出来ない。
自分を慰めることも出来ない。
自分を抱きしめてあげることも出来ない。



私は誰?
私は、なんでこんなところに来てしまったの?


この世界にいた嘉賀舞ちゃんの人生を奪って……。

消えてしまった、あの泣き虫舞ちゃんは、今はどうしてるの?




疑問は尽きない。
罪悪感も深まるだけで、ただ狂ったように泣き叫ぶことしか出来なかった。






「舞」





そんな海辺で泣き叫ぶことしか出来なかった私を、
連れ戻しに来てくれたのも、ずっと一緒にいてくれた晋兄だった。



< 114 / 146 >

この作品をシェア

pagetop