約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「放っといて。
私は晋兄の知ってる、舞じゃないの。
だから放っておいて。
私は、晋兄の知ってる舞ちゃんを奪って今ここにいる、晋兄たちの知らない舞だから」
私が晋兄たちの幼馴染じゃないなら、晋兄って親しげに呼んじゃいけないと思う。
だけど、ずっと晋兄って呼び続けてた私には今更、高杉さんにも、谷さんにも呼び方すら変えられない。
私が現代に今すぐ、帰ることが出来たら、消えてしまった舞ちゃんは、この世界に戻ってくるの?
ねぇ、どうしたらいい?
どんなに考えても解決策なんて何も思い浮かばなくて、
自分を責め続けることしか出来ない。
涙やら、鼻水やら、咳やら、わからないぐちゃぐちゃの感情に翻弄されながら、
崩れこんだままの私は今度はむせて呼吸すらまままらなくなって、
息が吸えない現実にかきむしる様に胸元へと手を押しやった。
息が吸えない苦しさに、また目の前が真っ暗になっていく。
「舞、おいっ、しっかりしろ」
誰かに抱き留められる感覚が包む中、
また意識が遠ざかっていった。
☆
「舞、これからどうするんだ?
俺と一緒に会津に行くか?」
「参ります。
私は貴方の傍に……」
そう言って舞ちゃんの傍で微笑むのは、斎藤さん……。
そしてそのシーンは、何処かの小屋へと繋がっていく。
「舞、その子は……」
舞ちゃんの腕に抱かれているのは、小さな生まれたばかりの赤ちゃん。
そしてその隣でも、斎藤さんが微笑んでた。
夢に見続けていた、その赤ちゃんが誕生したシーンは、
もう一人の舞ちゃんと斎藤さんの記憶なのだと受け止めることが出来た。
「舞、その子を連れて旅を続けるのか?」
「一【はじめ】さん、貴方にご迷惑はおかけしません。
ですから、私とこの子のことは気になさらず、
会津へと向かってください」
舞ちゃんは、そう言って斎藤さんを送り出した。
その後、舞ちゃんがとった行動は、生まれたばかりの赤ちゃんを育ててくれる人を探し回ってた。
何軒
も、家を訪ね歩いては、生まれたばかりの赤ちゃんを育ててくれる、そんな人を探し続ける。
そしてようやく見つけたその人に、もう一人の舞ちゃんは生まれたばかりの子供を託すと、
再び会津へと向かっていった。
鉄砲の音が鳴り響く、会津戦争真っただ中の場所に足を踏み込んだ舞ちゃんは自らも銃を手にして戦ってた。
「舞、土方さんの方へと迎え。
新選組の誠の志と共に。
俺は、この地で誠の旗を掲げ続ける。
万が一、新政府に負けるようなことになっても、
お前が俺たちの想いを届けてくれ」
そんな斎藤さんの願いを抱えて一人、会津を飛び出して蝦夷の地を目指していく舞ちゃん。