約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
ゆっくりと手を伸ばして雅姉さまへの愛の言葉が紡がれた
手紙を読む。
どの手紙にも雅姉さまを気遣う手紙や読書をしなさい、
和歌を詠みなさいなど綴られていたけど
晋兄の居場所を伝える手紙は、一通もなかった。
「雅姉さま……」
「あの人なりの優しさなのよ。
私たちを争いに巻き込まないように。
舞ちゃん、貴女さえよければ
晋作が帰ってくるまで、ここに居てくれてもいいのよ」
そう言ってくれた雅姉さまの言葉は
嬉しかったけど、私はゆっくりと首を横に振る。
「舞ちゃん……」
ごめんなさい。
私は晋兄に、私の言葉で義兄の最期を伝えたい。
それに……このままここに居ても、
晋兄に会うことは出来ないから。
遠い昔、知ることが出来なかった
晋兄の現実。
それを遠い未来で知り得た
私だからこそ、思える……未来予想図。
ハズれて欲しい。
だけど義兄の運命も変わることがなかったから、
多分……晋兄の運命も変えることは出来ない。
だからこそ、変えられない未来なら、
せめて晋兄の一番近くで晋兄を見ていたいから。
「雅姉さま……。
私、やっぱり晋兄に会いたいです。
晋兄を探します」
そんな私に雅姉さまは小さく溜息をつく。
「困った妹ね。
こんなところまで、
あの人の生き方を真似なくてもいいのよ。
芯があって、頑固なんだから。
いいわ、だけど……それが舞ちゃんだもの。
明日、下関に行きなさい。
下関に[おうの]と言う人がいるわ。
その人を訪ねて見なさい。
おうのさんなら、私が知らないことを
知ってるかも知れないわね」
そうやって紡いだその名前。
「おうのさん」の名前を紡いだ雅姉さま。
雅姉さま……
その人は晋兄の何ですか?
雅姉さまをそんな風に
悲しそうな表情に追い詰めるその人は……。
「さぁ、明日出発するのよね。
舞ちゃんは、早く休みなさい。
明日からまた旅を頑張れるように」
その日、懐かしい部屋で
ゆっくりと熟睡することが出来た。
明くる日、私の頭元には新しい着物。
着物の上には、
雅姉さまからの手紙。