約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
瑠花の記憶が、存在が皆の中から消えた。
もしかしたら現代に戻ったの?
核心とまではいかないけど、漠然と連想出来た現実。
なら沖田さんは?
瑠花と一緒に出掛けた沖田さん。
沖田さんの心の中からも、瑠花は消えてしまったの?
沖田さんは、そこにいるって土方さんはさっき言った。
だったら沖田さんに会えば……。
私は指さされた方へと視線を向けて庭へと向かう。
「沖田先生、お体は大事ありませんか?
お休みにならなくてよろしいのですか?」
隊士たちに気遣われるように囲まれて、
その中心で立ち尽くしていたのは見慣れた存在だった。
敬里【としざと】……、
なんでアンタが沖田さんって呼ばれてるのよっ!!
目の前に現れた突然の人物に消えてしまった沖田さんの存在。
私はスタスタと囲まれてる敬里の方へと向かった。
「お帰りなさい。
沖田さん……瑠花は?」
わざと隊士たちに呼ばれている名前で、
声をかけると敬里は『花桜』っと私の名前を呟いた。
アイツは、やっぱり敬里。
核心を得た私は敬里の腕をスっと掴んで、
隊士たちの輪から連れ出すと、人気【ひとけ】がない暗がりへと連れて行った。
「花桜……」
「敬里、アンタ何やってんのよ。
こんなところで」
「花桜、お前こそ今まで何やってんだよ。
それに俺が沖田だなんて、なんでそんなこと言うんだよ。
お前まで……」
敬里は戸惑っているようで石垣に体をもたらせながら、
私を見つめた。
「ここは幕末の京都。
瑠花と離れちゃったから今が何かはわかんないけど、
油小路の変ってのがこの間あって今、二条城からの帰りに近藤さんが撃たれたから、
多分、もうすぐ何処かで戊辰戦争って言うのが始まるんだと思う」
「瑠花?
アイツもここにいるのかよ」
「瑠花も舞も……三人で、気が付いたら幕末に居たのよ。
あのインターハイの後に。
それから三人で、必死にこの幕末の時代を生き抜いてた」
そう言うと敬里は驚いたように私を見つめて、
自分の体へと視線を移した。
「お前も……花桜も、俺が沖田と呼ばれたみたいに誰かの名前で呼ばれたのか?」
敬里のその問いかけに、私は首を横に振った。