約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
ごめんね。
強くなるって、
もう泣かないって決めたのに。
私はまだまだ甘ちゃんだね。
私が泣き止んで落ち着くまで、
晋兄はその暖かさで抱きとめてくれた。
「晋兄……私が居ない間、
何してたの?」
不意に小さく問いかけた言葉。
晋兄は相変わらず私をすっぽりと包み込んだままで、
ゆっくりと自分の身に起きた出来事を教えてくれた。
京から長州に戻った後、
脱藩の罪で投獄されていたこと。
投獄から謹慎をしていた晋兄を頼って
イギリス、フランス、アメリカ、オランダの4カ国連合艦隊との
下関での戦いの交渉の全権が任されたこととか。
晋兄は凄く面白そうに楽しそうに話聞かせてくれるけど、
やられた方はたまんないよね。
長州が4か国連合から賠償金を求められた金額400万ドル。
そのお金は幕府に請求しろっと言ってやったっとか。
彦島を貸せと言われたが貸せと言うことが
植民地のことだと上海を見てわかっていたから、
古事記を言い聞かせて退けてやったとか……。
って……あのさー、古事記って晋兄あれだよね。
天地のはじめから綴られる日本の創世記って言うか、
現代でも、古典の時間に読みながら発狂しそうになったアレ。
アレを延々と、彦島の件がうやむやになるまで
聞かせ続けたって……晋兄がそれをやって、
外国の人たちが困り果ててる姿を想像してたら面白くなって、
笑いが止まらなくなっちゃった。
笑い続ける私を見ながら、
晋兄は自慢げに今も続ける。
そうだよね。
そう言うことをサラっとやってのけるのが
晋兄だもん。
ちゃんと晋兄は、
ずっと晋兄のままだった。
そのことが凄く嬉しくて、
その後、雅姉さまから預かった
着物を晋兄に手渡す。
晋兄はその場で新しい着流し姿で、
その場に座って三味線をつま弾く。
晋兄、私……
ちゃんと晋兄の隣を歩いていたい。
晋兄が旅立つその日まで。
何処までも型破りで破天荒な
そんな晋兄だから私は惹かれるんだから……。