約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
49.山南さんと過ごす時間 -花桜-
舞が京を出て一ヶ月以上が過ぎようとしていた。
瑠花と一緒に私が立ち聞きをした
その部屋に忍び込んで見つけた建白書。
私たちの世界に伝わる記録では、
非行五箇条とも言われるその存在だと気が付けたのは
瑠花の知識があったからこそ。
瑠花が近くに居てくれる力強さを感じながら、
私たちの何時もと変わらない時間は過ぎていた。
会津藩主、松平容保公に届けられた永倉さんたちの建白書。
近藤さんは会津公より呼び出されて、
慌てて駆けつける事態になり屯所内は一瞬騒がしくなったけど、
会津公の計らいか、斎藤さんが言った通り
和解と言う形で円満に落ち着いたらしい。
その数日後、近藤さんたちは屯所を後にして
関東の方へ新隊士募集の為に出掛けて行った。
屯所内を切り盛りするのは副長の土方さん。
そして総長の山南さんになるはずなのに、
最近の山南さんは、何を思っているのか全く傍に居てもわからない。
だからかな……。
瑠花から教えて貰った、
「山南さんが切腹する時期が近づいてきてる。
花桜、ちゃんと受け止められるように覚悟するんだよ」って
言われた言葉が、何度も心に突き刺さる。
後少ししか、山南さんの温もりを感じることが出来ないんだって言う思い重なるように、
相反する気持ちが大きくなっていくのを感じる。
本当はやっちゃいけないことだって知ってるけど、
寄り添うだけじゃなくて、今の私の家族のことを沢山沢山話して知って欲しい。
私は未来からやってきた、山南さんの血を受け継ぐ存在なんだよって。
だけど……歴史が変えれるなら、
そうやって願わずには居られない。
私の心の中に、僅かに残ってるわだかまり。
それは、まだ非行五箇条が会津公に提出される前。
山南さんの部屋に、明里さんのところに行かないかって
誘われて訪ねた時、入れ違いに出て行った永倉さんの存在。
『永倉君との話は終わりました』
ただ小さく、そう告げて永倉さんを見送った
山南さんの表情。
何かを思いつめたような表情がはなれない。
だけど、建白書には山南さんの名前は連なることはなくて。
山南さん、貴方はいったい何を考えてるの?