約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「ごめん。
思いだせたら教える。
それより廊下中断したなら洗濯物干すの手伝ってよ」
花桜に催促すると桶を地面に置いて、
手際よく洗濯ものを干し始めた。
花桜が手伝い始めると洗濯物は
あっと言う間に干し終わってようやくの自由時間。
今日は総司は朝から出掛けていて居ないため、
私は花桜の傍で、練習風景を見学しながら道場の様子を見つめていた。
あれ……そう言えば隊士が足りない。
藤堂さんはいるでしょ。
総司は外出。
斎藤さんはあそこ……。
指を折りながら、確認するようにキョロキョロ視線を動かす。
あっ……原田さんと永倉さんがいないんだ。
何時も姿を見せてる二人が道場にいない。
何だったかな……。
二人がキーワードになる事件あったような気がするんだけどな。
考え込むように俯きながら必死で記憶を手繰り寄せる。
「あっ、そうよ。
わかった……花桜思い出した」
自分でも気が付かないほどに大声で行ってしまった私の口を
本能で塞ぐように、駆け寄ってくる花桜。
花桜の計らいと言うか私の告げた言葉は、
モゴモゴと曇った声になり他の隊士たちに聞かれることは避けられた。
「もう瑠花、思い出してくれたのは嬉しいけど、
聞かれるとマズいでしょ。
ここ道場出し。
部屋に行こう。
私、藤堂さんと斎藤さんに抜けること伝えてくる。
練習相手になってくれたお礼も伝えたいし。
その後、じっくりと聞かせて貰うよ」
そう言うと花桜は私に背を向けて二人の方へと歩いて行く。
そんな花桜を見つめる視線の先、鋭い眼差しで私を見る、
斎藤さんの視線に思わず目を背ける。
なんだろう。
やましいことをしてるわけじゃないのに、
罪悪感にも似た感情を感じてしまうなんて。
歴史を知っているから?
歴史を知っても、どうにも出来ないと諦めてしまっている
その心を見透かされるから?
一度そう思ってしまったら、道場で一生懸命に練習する隊士たちを
まともに見つめることなんて出来なくて逃げるように道場を後にした。
どれだけこの世界で生きる覚悟をしたって言っても
所詮、やっぱり別世界の人間。
だから……一番自分が疎外感を強く感じてしまうんだろうな。
ちゃんとこの世界で生きるって決めたし、
精一杯頑張るって決めたのに、それでも……完全のこの世界の住人にはなりきれない。