約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
そして晋兄は、その山県さんに向かって
クーデターを決行したい旨を告げる。
傍で聞いてるだけの私もあまりの晋兄の無茶ぶりに
ただ茫然とするばかり。
山県さんは晋兄のクーデターに賛成しない。
「もう頼まん。
ただこれまでの厚情に免じて馬を一頭貸してほしい。
萩へ行き、殿さんを諌め聞き入られねば腹掻っ切って死ぬ」
上手くいかない晋兄は落ち込むかなと思いきや、
次の瞬間、山県さんに向かって口悪く叫ぶ。
そんな晋兄の無茶ぶりに言葉を失う私。
ねぇ、晋兄……。
晋兄についてくって決めたよ。
ついてくって決めたけど、晋兄が何を考えてるか
わかんないよ……私。
期限を決めて、約束の場所で待ち続けるも
晋兄の想いに賛同してくれる存在は少ない。
そんな中、その場所に姿を見せてくれたのは
晋兄の弟分でもある伊藤さんだった。
伊藤さんが姿を見せた後に、
少しずつ増え始める様々な身分の人々。
そんな人たちの中心に破天荒な晋兄は、
民たちをまとめ誘うように手腕を振るう。
「さぁて。
今から長州男児の肝っ玉をお目にかけます」
約束の時間。
集まった人々を引き連れて晋兄は偉そうな存在の人に
出陣の挨拶をすると、颯爽と馬を走らせ始めた
『俺が死んだら、墓前に芸子を集めて
三弦鳴らして賑やかにまつってくれ』
出陣の際、晋兄が告げた縁起でもない言葉が
私の不安を誘う。
そんな晋兄の背中にギュっとしがみ付きながら
私はこれから起こる出来事を自分なりに必死に見据えていた。
晋兄が動く日。
それは私にとっても、
かけかげえのない大きな一日。
大丈夫……。
後悔したくないから、
ちゃんと前を向いて歩き出したいから。
だから私は……何処までも、
自分の意志でついていく。
その全てを見届けて、
後悔しないために。