約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「花桜ちゃん、わいの薬。
ちゃんと飲むんやでー」
そう言いながら、烝は足音も立てずに
何時もの様に部屋から出て行った。
手にした湯呑の温もりを感じながら
目の前の液体と睨めっこ。
マズそう……。
このまま中身の液体を捨ててしまいたい衝動と葛藤しながら
睨めっこを続ける私。
鼻を摘まんで一気に飲み干す?
いやっ、でも……まだ熱い薬湯を一気に飲んだら
別の意味で火傷するよ。
外の冷気に触れさせて、冷ますことが出来たら、
多少は一気飲みしやすくなる?
そんな安易な考えから、薬湯を手にして沖影を杖代わりに
部屋の外へと向かおうとするものの本調子じゃない体は上手く動かない。
体制を崩しかけた私の前に再び現れて支えたのも烝。
「なんや、まだ飲んでへんのか?
口移しがええか?」
本気何だか、嘘何だかわからない烝の言葉に
慌てた私は、一気に手にしていた湯呑を口元に運んで
煽るように飲み干した。
飲み終えた後は、
あまりの渋さにゲホゲホと咳き込みながら。
「この世の飲み物じゃないわ。
殺す気なの?」
背中をさすってくれる、烝の掌の温もりを感じながらも
精一杯、憎まれ口を叩く。
だけど……やがて、私の体は崩れるように意識が薄れていく。
*
次に気が付いたところは、
パカパカとリズムよく振動が伝わる馬上。
「花桜ちゃん、起きたか?
少しは体、楽になったか?」
そう言いながら烝の片腕は烝の前に座りながら
体を起こした私を優しく支えてくれる。
「少し休むか?」
そう言って馬を止めて馬上から降りた烝は、
すぐに火を起こして私を座らせた。
「岩倉からの差し入れ」
そう言って、瑠花のお握りを握らせる烝。
お握りを一口、二口と口にしながら
私は烝を見つめる。
「ねぇ……烝。
私、情けないよね。
すぐに倒れちゃうし、まだまだ未熟だし。
お祖父ちゃんの後継者に選ばれて、
沖影を譲り受けたのに、全然使いこなせない。
継承者候補、もう一人いたんだ……。
敬里って言って、私の従兄弟なんだけどね。
敬里が選ばれてたら、ここに来たのは敬里で守られた命、
阻止された事件もあるのかな?」
沖影を握りしめながら、
小さく呟く私。