約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「花桜ちゃん、わい思うんやけど
花桜ちゃんやから、沖影継承したんちゃう?
山南さんは、花桜ちゃんって言う光が近くに居たから
今日まで頑張ってたんちゃう?」
そうやって告げられる言葉。
後ろから抱きしめられて、
伝わってくる温もり。
「もしも……なんてもんは、存在せん。
けどな……わいは、
花桜ちゃんに出逢えて嬉しかった。
敬里っちゅう奴やなくて花桜ちゃんが、
わいの上に舞い降りて来て良かったおもてる。
だから今は、そんな花桜ちゃんが守りたい人を
わいも精一杯守っていく。
わいが好きなヤツに出来るのは、
こんくらいの事やから」
丞はそう言うと、私に竹筒を手渡して、
その場から立ち上がると起こした火を消していく。
「花桜ちゃん、出発や。
もうすぐ、追い付くやろ」
そう言うと丞は私を先に騎乗させて、
その後ろから私を支えるように座って、
ゆっくりと手綱を動かした。
また勢いよく山深い山道を馬は駆け出していく。
降り出した小雨は、気温が下がるのと同時に
雪へと姿を変えていく。
それでも丞が操る馬は、
そのスピードを緩めることもない。
冷たい風を切りながら駆けつづけたその先、
烝が「捉えた」っと告げた向こう側。
峠の茶屋らしき前で、沖田さんの乗ってきた馬が、
暇そうに待機している。
そんな私の視界に飛び込んできたのは、
沖田さんが手拭いを口元にあてながら激しく咳き込んでいる姿。
その傍には、山南さんと明里さん。
見つからないでほしかった、
山南さんと明里さん。
二人を見つけて欲しくなかった沖田さん。
そんな三人が……小さな茶屋に座りながら、
存在する。
「山崎君」
私たちの姿を視界にとめた
山南さんが、丞の名前を呼ぶ。
馬を止めて私をおろしてから自らも降りると
丞は、腰元の布袋から薬らしきものを取り出す。
それを沖田さんに手渡すと、
水を差しだして、ゆっくりと服用させた。