約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「花桜君」
久しぶりに差し出された手。
その手の温もりを刻み込むように掴み取る。
「総司……」
もう片方の手は
沖田さんを招き寄せる。
帰り道、会話のないまま
京までの道を歩いていく。
辿りついた先の未来は永遠の別れだと、
法度によって決まっているから。
そして……その法度によって崩壊しつつある秩序を
もう一度、再構築させるための山南さんの決意なのだと、
選んだ未来なのだと最後に過ごした宿で貴方が教えてくれたから。
何度も過るその夢は、現に起こりうる未来で、
もう避けることが出来ないものなのだと思い知らされた。
泣いてしまうことが出来れば
ラクになれるかも知れない。
だけど涙すら出ることはない。
ただ山南さんの背中を見つめながら歩いていくだけ。
その背を精一杯、
私の中で無心に刻み続けた。
この世界で私を守ってくれた
大きな背中。
家族を薫らせる大切な存在。
「総司、どうしてコイツがいる?」
開口一番、屯所に戻った私たちを捉えた
土方さんは、一言吐き出すように告げて
そのまま山南さんの胸倉を掴み上げる。
そんな掴みかかった土方さんの手を山南さんは、
少し微笑んでゆっくりと掴み取るように自らの手を重ねて
下へと引き下ろす。
「土方君、近藤さんの元に参りましょう」
山南さんは、そう言って家の中へと土方さんと消えて行った。
入れ違いに家の中から駆け出してきたのは瑠花。
「総司、花桜」
そう言って、私たちを順番に抱きしめる。
何を言わなくても、
瑠花は一番知ってる。
これから起こる歴史の結末を。
どれだけ望んでも、
変えることが出来なかった未来の行方を。
瑠花は沖田さんを連れて、何処かへと消えていく。
あっ……沖田さんの病気の事、
伝えなきゃ……。
そう思ったのに、
私は何も伝えられなかった。
そのまま私は、自分の部屋へと引きこもり
自分の心を整頓していく。
これから起こる未来。
あの夢が現実になる……時間。
私が大切に思えたその人が旅立つ時、
私は……どうやって見送るのがただしいの?
臆病な私が、その場所に居られる?
そんな自信はない。
だけど……何も知らないところで全てが終わったら
それもまた私は後悔する。
お祖父ちゃん……私に強さをください。