約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く

58.昨日と今日を繋ぐ空 -花桜-



山南さんが旅立ってしまった後も、
私と瑠花は、京の町で新選組の皆の元でいつもと同じように過ごしていた。

ただ一つ大きく変わった変化と言うのは八木邸から引っ越ししたこと。

私たちが引っ越しした先は西本願寺。
現代に居た頃、中学の修学旅行で見学したその場所。


聞きなれた建物に引っ越しした後も、私と瑠花のやるべきことが変わるわけではない。

主な仕事はもう慣れてしまった雑務。
掃除・洗濯・炊事。


その合間に私は沖影を手にして素振りの練習をしてる。



私が剣の練習をして居るときは、傍でボーっと見守ってくれていた瑠花も
最近は何か個人的にやりたいことがあるのか、雑務の後はふらりと姿を消していく。




山南さんの一件は、今の私にとって悲しくないわけじゃない。


だけど……ずっと一緒に過ごせた私には、
山南さんは自身の本懐を遂げたような、そんな気がするから。


ご先祖様の最期を見届けるのは正直怖かったけど、
ここで万が一何かが変わってしまっていたら、その瞬間に私はこの世に生まれることが出来なかったかもしれない。

あの頃は思いもしなかったけど、少し日が経つにつれて、そんな風にも見えるようになった。



山南さんは私のことがなくても、自身の誠のためにその命の最期を自分で決めた。
そんな風に思えるけど、だけど……歴史を変えないためでもあったのかな……って、
そう思えるようにもなった。


自意識過剰って思われても、どう思われても真実はもうわからないけど、
過ごしてきた時間が、私にそれを教えてくれる。


旅立ってしまったものを思って後悔してくよくよ過ごし続けるより、
天国に旅立ってしまったご先祖様が、堂々と安心して過ごせる凛とした私でありたいって、
そう言い聞かせながら、一日一日を過ごしてる。



ずっと繋がっている空を眺めながら。



大空【そら】は、山南さんにも、舞にも、遠い未来の世界の私の家族にもちゃんと繋がっている。
そんな風に今は思えるから。


だから……私は、この先の未来も私がこの場所で生き続ける限りは精一杯、生きていきたいって今一度感じることが出来た。


青空の下、大きく深呼吸をして空を見つめた。



少し汗を流したくて井戸の方へと境内を歩いていく。
そこで井戸水をくみ上げて、持っていた手ぬぐいに水を含むと、軽く絞って腕や手、顔におしあてた。


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