約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
62.初めての一人旅 -瑠花-
「すいません。
人を探しているのですが……」
広島で近藤さんたちと別れて舞を探そうとする者の見知らぬ土地で、
方向感覚もわからず、街中を少しでも手掛かりが欲しくて彷徨う。
野菜売り声が響く、簪売りの声が響く。
現代でいう商店街のような場所は賑わいをみせていた。
何処の町でも、そこに住む人たちは忙しなく動き続けてる。
そんな町で私は一人、舞の手掛かりを探していた。
「まぁ、人探しですか?」
少し品の良さそうな女性が足を止めてくれて、
私の方へと私の話を聞こうと微笑みかけてくれた。
「すいません、これくらいの髪の、少し明るい髪色の女の子を探しています。
年は私と同じくらいなのですが知りませんか?」
舞の写真が見せられたら、人探しも簡単なのかもしれない。
だけど文明の利器を取り出すことも、お揃いの匂い袋に入れたまま写真も、
私が友を思って、一人楽しむための道具にすぎない。
「手掛かりが、それだけではねー。
他に何か手掛かりはないのかい?」
そう問われて、いちかばちかの賭けに出ることを覚悟する。
長州にいるかも知れないっと告げることの恐怖と闘いながら。
ここ広島は第一次長州征伐で、安芸が前線基地になっていたはずだから、
その戦によって被害に巻き込まれた人もいると推測される。
長州に近い場所だからこそ情報が引き出せるかもしれないし、
疎まれるかもしれない。
「もしかしたら……長州に……」
そこまで口を開いたら、立ち止まってくれた女の人は何か穢れたものを見るみたいに
私の前から足早に過ぎ去っていった。
それでも立ち止まることは出来ない。
私はちゃんと自分の足で立ち上がるために京を離れたのだから。
一人また一人と声をかけては疎まれる時間は続いた。