約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く


「高杉さんと会えますか?」

「会えれば嬉しい。
 だが会えずとも高杉さんには、気持ちは伝わるでしょう。

 あの方は優しすぎる。優しい故に今もこうやってワシたちを遠ざける」

「けんどどれだけ遠ざけられても、わしらの気持ちは変わらん。
 高杉さんに助けてもろうたご恩は、簡単に返せるものじゃない」

「高杉さんの病は?」

「労咳という噂だな」

「あぁ、あの血を吐いたのは確かにそうとしか思えん」




そんな会話が耳に入ってきて、私は思わず足を止めて声をかけた。



「あの谷さん……、えっと高杉さんに用事ですか?」


私の声に、その集団の足がピタリと止まる。


「あんたは?」


そう言われた直後、「あぁ、戦神じゃ」農民たちの一人が呟く。


「戦神?
 あんた、あの時一緒に戦った舞さんかい?」


そう言って、次の人が私を見つめると、次々と納得したように頷いていく。


「私を知ってるんですか?」

「あぁ。
 高杉さんと共にわしらも戦った仲間ですから。

 して、舞さんはどうしてこんなところに?」


気遣う様にその人は私を見つめる。



「少し晋兄と言い合いしてしまって頭冷やしに歩いてたんです」

「高杉さんと喧嘩を……」


納得したように誰かが頷いた。



「あの教えてもらえませんか?
 晋兄の為に何かしたいんです。

 でも晋兄は私には何も教えてくれなくて。
 労咳って、どうやったらなおるんですか?」



そんなことを真剣に聞く私に私を知るその人たちは、
まっすぐに向き合う様に答えてくれた。



労咳の原因は暴飲暴食のせいで脾臓と胃が調子悪くなり、消化不良の結果だと言われていること。
性行為過多が原因だ精神疲労が原因だなど、誤解を招くようなことばかりが次々と出てきた。


私的にはびっくりするような言い分でも、当時の人たちにとってはそれが信じられたのだと思う。


治し方として言われているのが、浣腸と採血を繰り返して体の毒を抜く・鯉の生き血やイモリの黒焼きを食べさせる・
猿の肝・高麗人参なども次にあげられた。


そして最後に驚いたのは、労咳の患者は黒猫をかえばいいと思われていたこと。
あまりの突拍子もない情報に、驚く私と……なんでもいいから縋り付きたいと望む私。

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