約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く
「舞……」
「ごっ、ごめんなさい。
ちゃんと私は出ていくから。
でも……晋兄、クロだけは傍に置いて。
労咳の人は、黒猫をかうといんでしょう?
そうやって聞いたから。
クロのお世話はちゃんと私がここに通ってするから。
晋兄には迷惑はかけないから」
そう言うと、晋兄は呆れたように「わかった」と頷いてくれた。
そしてクロに向かって「おいっ。クロ、来るか」なんて相手をしてくれる。
「まぁ、可愛らしい猫ちゃん。
晋さまに、もう懐いているのね。
晋さま、先ほど奇兵隊の方が帰られましたわ。
さっ、こちらは今日の大棗酒(たいそうしゅ)ですわ」
そう言うと、おうのさんは晋兄の元へと何かを差し出す。
「おうのさん、お酒なの?」
「薬酒ですわ。
お見舞いの品に桂さんが下さったものだそうです。
唐人参は飲みづらいですからね。
飲み安い薬も必要だろうと……」
そんな会話をしている間に、晋兄はその薬酒の入った器を手に取って、
グっと飲み干した。
「クロ、晋兄のこと頼んだからね。
明日また来るから」
明日また来るから……晋兄。
だから……毎日、少しでも元気な姿を見せて。
晋兄を慕う人たちは、
皆、元気に姿を見せてくれるのを待ってるんだから。