あなたの心理テスト(ホラー)
 努の拳は正の鼻に。


 正の顔は痛みで歪み、努の顔は涙と怒りでぐちゃぐちゃだ。


正の鼻からは血が流れ、努の拳は軽い掠り傷を負っている。


「ちょっと努!やめてよ!」


 努のことを後ろから蘭が抑える。


「蘭、離してくれ!!コイツ…もっとやんねーと気がすまねえんだよ…」


「嫌よ!いくら腹が立ったからってやめなさい!努らしくないわ!」


「うるせえ!何が俺らしいとか何が俺らしくないとかわからねーよ!知るか!」


 バッと蘭の抑えを振りほどき、もう一回殴りかかろうとする。


「おい、努…!てめえ、俺に殴りかかったってことはそれなりの覚悟はできてるんだろ?」


 よろよろと立ちあがった正は当たり前だが、かなり怒っている。


「こら、やめないか!」


 五十嵐が2人の間に入って、やめさせようと必死だ。


両手を広げ、2人の視界を遮る。


 蘭は努に話しかけて説得し、海斗は涙目に。ヨシは顔を伏せていて、表情が読み取れない。


 しかし努の怒りは一向に収まらない。


なかなか怒らない努が怒ったのだから、そう簡単に収まるはずがない。


「ほら、正。お前も確かに悪かったぞ」


 五十嵐は正を説得している。


 正は近くにいたクラスメイトにティッシュを要求し、鼻に詰めた。


「俺は悪くないっすよ。あいつがただ勝手にキレただけじゃないすか」


「まあ、心にも無いことを言ったお前も悪いんだ。努もな」


 それを聞いた努はまたはらわたが煮えくり返る思いにさせられた。


―――――俺は悪くない。くるみが死んでしまって悲しいと言っただけ。


   あいつがあんなことを言うからいけねえんだよ…。


「まあ、とにかく落ち着け。正は保健室に来て手当をしよう」


 五十嵐は無理矢理に正と努を離し、教室から正が出ていくとき、正は努に、


白目をむき、舌を出し、その後頬を膨らませて親指を下に向けた。


 子供のようなその挑発に努は、


「…っあのヤロー……」


冷静になれず、乗ってしまった。


 だが、


「ちょっと!努!」


蘭によって再び努が正に殴りかかることはなかった。
< 31 / 52 >

この作品をシェア

pagetop