あなたの心理テスト(ホラー)
 「俺は……」


―――――受け入れられるのか?受け入れられないのか?


   でももうくるみは死んだって言われているんだ。事実以外の何でもない。


「受け入れられるよ」


 珍しく静かな教室に、努の声が面白いほど響き渡った。


「本当か?」


 ヨシが尋ねる。ヨシの目はもうどこを見ているのかわからない。


「ああ。本当だ」


「本当か?絶対か?」


「当たり前だ。受け入れてやらないとくるみも辛いだろうから」


 ふーん、と言って次に言う事を考えているヨシ。


努のことを疑っているのか何なのか、じろじろと努を上から下まで眺めている。


「努、覚えてるか?先生が言った、くるみの『状況』」


「状況?」


 訳が分からないといった様子で努はヨシに問う。


「くるみ…顔に穴が開いてるって言ってなかったか?


 少なくとも俺の耳にはそう聞こえたんだ」


 耳を人差し指でこんこんと軽くたたき、言ってなかったか、ヨシは努に訊いてきた。


「あ、な…」


―――――そうだ。確かに言っていた。顔に穴が開いて即死…。


   顔に、穴…。くるみの目も、口も、鼻も、眉毛も、まつ毛も、頬も……


   無くなってしまったのか…?


 そう思った努の頭の中に、信じられるか、という言葉が芽生えた。


 俺は、俺は信じない…。信じたくない…。見たくない…。


『ない』の嵐が降りかかった。


「その様子だと、認められないようね」


 蘭が口を開いた。


「ああ。努の性格からして、俺もそうだと思ったよ」


 続いてヨシ。


「違う…俺は信じられる!顔に穴が開いてたって何が開いてたって、


 くるみはくるみだ!俺は、最期のくるみの姿を見届けてやりたいんだよ!」


「無理よ」


「無理じゃない!」


「無理だ」


「ヨシまで!」


 2対1で攻められる努に、味方はいなかった。


だからと言って、敵でもないのだが。


「ちが…俺は信じる。だから、くるみに会うんだ…」


 1つ1つ言葉をつなぎ、努は何とか喋れている。


「「無理」」


 努の願いを聞き入れない2人に、努は苛立った。


「そうかよ…」


 努はその場に膝から崩れ落ちた。
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