あなたの心理テスト(ホラー)
 「…俺、くるみに会ってくる」


 蘭が掴んでいた手を振りほどき、努は教室から出て行こうとした。


 再度、蘭が努の服の裾をつかむ。


「ちょ、待ちなさいよ!どこにくるみがいるかなんてわからないじゃない!」


 ピタッと努は立ち止まった。


 それはそうかと思っているのかもしれない。


「だったら…俺、くるみの家の電話番号知ってるから、携帯からかけて、


 くるみの場所を聞き出す。もちろんくるみの家族から」


 努の話を聞いた途端、蘭の眉毛がぴくっと動く。


「馬鹿言わないで!くるみの両親だって悲しんでいるのに努、あんたが電話かけて


 『くるみは今どこに?』なんて聞いたら怒鳴られるわ!」


 必死に努を止めようと必死の蘭。


 授業がもうすぐ始まるし、努を外に行かせるわけにはいかない。


今この状況で止められるのは自分だけだと判断したようだ。


「それでも俺は今すぐくるみに会いたいんだ。それくらいの覚悟、とっくにできてるし」


「私だって今すぐにでも会いたいわよ。だけどもう授業が―――――」


「わかってるよ!!」


 努が蘭の言葉を遮って話し出す。


「授業授業って、自分の親しい奴が死んでまでやることか?


 授業は明日も明後日もずっと続く。だけどな…


 少し前まで生きていたくるみに会えるのは、今だけなんだよ!!」


 努の目には涙がたまり、ふざけたところなど一か所もない。


そう誰もが思った。


「俺だって会いてえよ」


 誰かの椅子ががたっと音を鳴らして動いた。


さっきまで顔を伏せていた、ヨシだ。


「ヨシ…」


「努、俺もそう思う。でも辛くないか?死んだくるみに会うんだぞ。


 お前はそれを事実として受け入れられるのか?」


 ヨシの目は赤くなっており、頬には涙の跡。


顔を伏せながらこっそり泣いていたようだ。


―――――受け入れられるか…。


 努の頭の中に不安が渦巻く。


―――――見て余計辛くなるくらいなら見ない方がいいのか?


   俺はそれを……受け入れられるのか?


「どうなんだよ」


 ヨシは涙ながらにそう言った。
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