あなたの心理テスト(ホラー)
 「そうかよ。俺のこと、そこまで信じられないか」


 小さい子供のように涙を流しながらもう努は半分拗ねている。


「違うわ」


 努が子供なら蘭はお母さんだろうか。


ゆっくり、落ち着いた調子で努を制する。


 努の低くなった姿勢に合わせて、蘭はしゃがみこんだ。


「あのね、努。私もヨシもあなたのことを思って言ってるの。


 努がもしくるみのせいで立ち直れなかったら…努が努でいられなくなってしまったら…


 そのリスクを考えて、言ってるのよ」


 本当に蘭は母親のようだった。『あなたのことを思って』も母親のキメ台詞だ。


―――――確かにそうだけど…。


 努は諦めきれなかった。今現在、くるみがどんな様子でどこにいるか、気が気でない。


―――――くるみに会いたい。


 それだけが努の頭の中に渦巻いて、努自身が飲み込まれそうだった。


好きだからとか、そういう感情ではないのだ。


ただ純粋に、会いたいと思っているだけ。


 なのに、なぜ2人には伝わらないのか努は不思議で仕方ない。


―――――人1人に会うのにどうしてここまで制限されるんだ。


 努は今すぐここで叫びたかった。


―――――それも天皇や総理大臣じゃない。友達にだ。


   友達に会うのに心配もクソもあるか。俺は行く。誰が止めたって。


 努の意思は固まりかけていた。


まだ完全に固まったわけではない。2人の言っていることも正しいと思えるからだ。


―――――でも俺は……


「会いたいんだ」


   会いたくてたまらないんだ。


 努の黒く澄んだ瞳は強い意志を灯し、周りの人間にとても強い印象を与えた。


「「努…」」


 2人も多少驚いた。努の意思がここまで強いとは思っていなかったからだ。


 しかし、努のことを思うと、


「「でも駄目」」


行かせるわけにはいかないのである。
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