あなたの心理テスト(ホラー)
 「海斗!?海斗!!」


 努は海斗がいた席の周辺を見回した。


「どうしたの?努。海斗海斗って…」


 蘭は不思議そうな顔をして努を見つめている。


「海斗がいないんだよ!ほら!席にいないじゃないか!」


 努は海斗の席を指さし、蘭とヨシに訴えかけた。


「「…?」」


 何を言っているの?とでも言いたげな顔をしてヨシと蘭は努を見ている。


「ほら!いないじゃないか!煙のように消えちまった!」


「努、海斗はトイレに用を足しに行ったぞ。さっき」


 ヨシがきょとんとして言った。蘭は頷いている。


「え?あ?そうなのか?いつ行ったんだ?」


「だからさっきだって。3分前くらい」


―――――そうか。じゃあ心配することもなかったな。


 努は胸をなでおろした。


くるみに続いて海斗まで先立ってしまったのではないかと内心ひやひやしていた。


5人いる仲間が一気に3人まで減ったら…誰の嫌がらせかと思ってしまう。


―――――海斗もトイレで泣いていたりするのかな。


   あいつ、人前で泣かないから、こっそり泣いているんじゃないか?


 海斗は昔からそうだった。


人前で泣くのが嫌いで、どんなに悔しくてもその場では泣かなかった。


家に帰ってから、または寝る時に泣くらしい。


 そんな海斗の性格が努を惹きつけた。


だから今に至ってもそのままの仲のいい関係を保っている。


「「「ハア…」」」


 努、蘭、ヨシが一斉に深いため息をついた。


くるみの死に対するものか、この空気でトイレに行ったことへの呆れか。


それは分からないが、嫌な雰囲気なのは変わりなかった。


キーン コーン カーン コーン……


 その時、毎日鳴っているチャイムが鳴った。


1時間目の終わりを告げるチャイムだ。


いつもは10分間の休み時間が始まるため、皆テンションが上がる。


 だが、この雰囲気で何を楽しむことができよう。


 先生が注意もしていないのに、そもそも来てもいないのに、


教室内は驚くほど静かだった。
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