あなたの心理テスト(ホラー)
 「わかっていることを…言わないでくれ。ごめん、蘭。こんな言い方ないよな」


 努の目はどこを見ているのかわからない。


努の口は動いていても、目は全く動いていない。


空中の1点を見つめたままだ。


「ううん。私も、少し言い過ぎてしまったわ」


 蘭は首を横に振って答えた。


 クラス内の重たい雰囲気は未だに続いている。


まだ授業もしていないのに皆疲れきった顔をしている。


泣くことに疲れたのか、はたまた死を受け入れることに疲れたのか。


 努は明らかに後者である。


「俺、実は―――――」


 ヨシが小さく口を開いた。


「「?」」


 蘭はヨシのほうを見つめて不思議そうな顔をした。


 努は空中の1点からは目を離さず、眉をしかめた。


「実はな……」


「何?隠していたことでもあるの?」


 もごもごと口を動かし、言いそうで言わないヨシに蘭は問う。


「いや、やっぱりやめた」


 何なのか結局は言わなかった。


じゃあ最初から言いそうなそぶりを見せないでよ、と蘭はつぶやいた。


 時計の針は海斗がトイレに行ってから15分をさしている。


しかしそのことについてはその場にいる全員が触れない。


もはやくるみの死に比べてしまえば『どうでもいいこと』だからだろう。


「……ちょっと俺、屋上に行ってくるよ」


突然、努がやっと空中から目を離して蘭とヨシの方を見て言った。


「おい、外は雨だぞ?」


 ヨシが窓を指さして言った。


たしかに窓の外は土砂降りでもないがぽつぽつと雨が降り始めている。


 蘭も同じ様な事を言った。


「いいんだ。行きたくなったんだよ。気分ってヤツ」


 努はさっきの様子からは考えられないほどの眩しい笑顔を見せた。


外が雨なら今の努は太陽といったところである。


「そうか?ま、先生も来ないしいいんじゃないか?


 どっちみち、授業を受ける気なんてさらさらないんだろ?」


 ヨシはそう言ったが、蘭は行くなんて馬鹿じゃないの?という顔をしている。


「ヨシ、お前も来ないか?」


 努は何を思ったのかヨシに誘いかけた。


「仕方ねえな。行ってやるよ」


 こうして、2人は屋上へと向かうことにした。


教室には蘭を、トイレには海斗を残して。
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