あなたの心理テスト(ホラー)
 「おお、やっぱ降ってるな」


 努が屋上のドアを開けて言った。


教室にいた時よりも雨は強まり、本降りに近づいてきている。


夏の暑さと雨のせいで湿った空気とで、湿度はものすごく高い。


サウナまではいかないほどだが、制服を着てでのこの空気は辛い。


 2人は歩き、屋上のちょうど真ん中まで来た。


 コンクリートの地面はところどころ黒に染まり、柄のようだ。


 よいしょと言って努はその場にあぐらをかいた。


それを見たヨシは何も言わず、努の横であぐらをかいた。


 2人は今、同じ姿勢だ。


 努が空を見上げると、ヨシも見上げる。


努がヨシの方を見れば、ヨシも努の方を見る。


そして目が合い、2人は笑いあった。


先ほどまでにあったことを、忘れようとしているかのように。


 2人はそのまま、喋りあった。


 先週に面白い本を買ったこと、クラスの〇〇が☓☓と付き合っていること、


あの先生がカツラだとかカツラじゃないとか。


そういうたわいもないことを話しあった。


「ああ、もう俺お腹痛い…!」


 数分話した後、ヨシは腹を抱えて涙まで流している。


「はは。お前もなかなか面白い話題持ってんじゃん」


 努もヨシと同じように涙を流している。


 雨は本降りになるかと思われたが、今は晴天。すっかり止んでいる。


「俺の今の気持ち、当ててみて」


 ヨシは自分の胸を軽くたたいてそう言った。


「は?無理だろ。俺エスパーじゃないし」


 努は手を上にあげ、おてあげといった様子。


「いや、ダメもとで」


「無理だって」


「そうか?じゃあ今の努の気持ち、言ってみろよ」


 努は訳が分からなかった。


―――――俺の気持ちを当てろと言っていたヨシが急に俺の気持ちを言えだなんて。


   俺の気持ちと努の気持ちは別物だろ。


「俺の気持ちを言えばいいんだよな?」


 努はヨシに確認した。


「ああ」


「…?」


 ヨシは努を見ているが、努の奥にある遠いものを見ている気もした。
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