あなたの心理テスト(ホラー)
 「俺は……やっぱり正直、まだくるみの死を受け入れられない」


 努の言葉を聞いて、ヨシはそうかとつぶやいた。


「まだ俺の中でくるみは生きているんだ。教室にいて、笑っている気がするんだ。


 そりゃ、まだ死んで間もないってこともあるけど、ショックが大きいんだよ」


 努はヨシの目を見て言った。


 ヨシは目を閉じて努の話を聞いている。決して寝てなどいない。


「そっか。それだよ、それ」


 ヨシはゆっくりと目を開けた。


「俺も、同じ気持ち」


 うっすらと目に涙を浮かべて言った。


「俺さ、直感で感じたんだよ。今の努の気持ちと今の俺の気持ちは同じだって」


 微笑んでそう語るヨシの目はどこか悲しげだ。


「だから俺の気持ちを言えって言ったのか…」


 努は納得した。


「そう。でさ、俺がさっき話そうとしたこと…努にだけ教えてやるよ。


 俺さ、くるみのこと、好きだったんだ」


「…え?お前が、くるみのこと…」


 努は何となく予想していた。保健室でのくるみに対する頭の撫で方を見た時から。


―――――あれはやっぱりヨシの好きサインなんだ。


   やっぱりそうだ。じゃあ最初から俺に恋の勝ち目は無かったってこった。


   じゃあ俺も、伝えてやらないと、いけないのかな。


   お互い世話の焼けるヤローだ。


「くるみもお前のこと、好きだったと思うぞ」


「え?でもあれはふざけてて本気なんかじゃ―――――」


「本気だよ」


 努は強く言い放った。


それ以外ありえないと断言している。


「ヨシのこと、くるみは本気で好きだったはずだ」


「嘘…だろ?」


「嘘を言ってどうする。くるみはさ、ヨシのことを話すときだけ、目の色が違ったんだ。


 あれはふざけてなんかいない。そうだ、知ってたか?


 くるみ、お前にうるさい、離れろとか言われた時、陰で泣いてたんだぞ」


 ヨシは泣いていた。


唇を噛み締め、声を出さないように。後悔を隠しているかのように。


「俺、好きだよ。くる、みのこと。伝えておけばよ、か、ったな。


 あいつもあいつなりに本気で伝えて…たんだよ、な」


 1つ1つ、言葉をつなぐ。伝えられなかった、くるみへの想い。


「ああ」


 努は静かに頷いた。ヨシはその場に勢いよく立ち上がり、


「……っ……ああああああああああああああああ!!!!!!


 なんで死んじまったんだよ!!保健室行って終わりじゃねえのかよ!!


 もう1回だけ好きって言ってくれよ!!今度は素直に言うから!!


 お前のことが好きだって!!ずっと一緒にいるからって!!いたいからって!!


 素直にいえなかっただけなんだよ!!気づいて…くれねえのか、よ。


 ぁ…っぁあ…クソぉ……っ」


 遠い空へ、くるみのいるであろう空へ、叫んだ。


ヨシの声は響き渡り、くるみの返事はない。


努はただ、黙って泣くしかなかった。
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