あなたの心理テスト(ホラー)
 「……」


 特に何もない。


 気を取り直して、2つめの個室を開けようとした。


いきなりだと心が落ち着かないため、大きく深呼吸をしてから、ドアを開ける。


「ふう……」


がちゃ。


 きつい臭いと努の予想に反して、2つめの個室にも何もなかった。


 なぜか残念だと思う努がいた。


これだけ勇気を振り絞って行動に出たのに、


何もないとはどういうことだと思ったに違いない。


ここまできたのだから、何か恐ろしいものが出てきてもよさそうだと努は思った。


 きつい臭いは相変わらず漂っているが、努の鼻が慣れ始めた。


もうめまいは起きないし、普通に立っていられる。


ただし、異変はまだ感じている。


 3つめのドア。そろそろ何か出てきてもいいのではないかと努は感じた。


「……」


がちゃ。


 努は自分の目を疑う。今見ている光景は幻想ではないのか。


 そこは、赤い部屋と化していた。


「……!!」


 思わず努は後退し、溢れ出てくる臭いに顔をしかめた。


 個室のあらゆるところに血は飛び、便器の中には丸い『何か』が入っている。


白かったであろう便器も、床も、扉も、天井も、あらゆるところが赤い。


努はいけないと思いながらも便器に入っている何かをよく見ようと前に乗り出した。


「何だ…?」


 角度を変えてみても、何かははっきりとはわからない。


所々にくぼみがあり、ふさふさのファーのような物もついている。


便器の水につかっていて、汚いのはよくわかった。


 努は考えた。これが何なのか。


この特徴から連想できる物……。


「…まさ、か…」


努は言葉を失った。


 喉から酸っぱい物がこみ上げ、努はそれに気づいて急いで飲み込む。


近くにあったブラシで『何か』をつついた。


そしてそれはうまい具合に転がり、


「……!!」


努の前に人間の顔として姿を現した。


 その顔は白目を剥いていて舌は裂かれ、額は骨が見えている。


そして、今にも努に襲いかかってきそうな表情を伴っていた。
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