恋愛メンテナンス
とんでもねぇ男の、とんでもねぇ出来事はまた起こった。

今夜は実は、モモちゃんが営業マンさんと食事の約束をしたらしくて。

私はおとも役として、行ってまいります。

営業マンかぁ…。

私は、お喋り好きだけどあまり社会情勢を理解してないから、難しい事を聞かれたり言われたりした…どうしよう。

こういう時に、自分の非常識さをヒシヒシと感じて気持ちが落ちる。

9時に駅まで迎えに来てくれるらしい。

2対2だって。

ちょっと大人びた服装にした。

ヒールも少しだけ高め。

私は、アパートの階段を降りながらスマホで時間を気にしていた。

その瞬間に、

「うぎゃぁっ!…」

階段の金具にヒールが引っ掛かって。

ヤバイ!…このままあと一歩で!

コケ落ちるぅぅぅ!…

スマホが飛んだ…。

「どぉわぁぁっ!」

「なんだなんだぁぁっ!」

………。

コケるかと思ったら、受け止められた。

というのか、私が自然と長い首に掴まったのか?

「…あぶねぇだろグァー!!」

そう言いながらも、私の腰にチャッカリ手を回して、私を受け止めてくれた永田さん。

「何なんだ、あんたはぁ、あぁっ?!(怒)」

落としたスマホの近くに、火のついたままのタバコが落ちていた。

「ごめんなさい!ヒールが…ヒールが…」

「ヒールじゃねぇだろ。前見て歩いてねぇからコケたんだろがぁ!?」

そう言いながらも、私の腰に両手を巻き付けて、しっかり偉そうに叱る永田さん。

だったら離れろや…。

でも、離れない私も図々しく彼の首元に両手を回したまま。

「とんでもねぇ女だな…」

あぁっ?!(怒)

また、とんでもねぇ男に「とんでもねぇ女」と言われた。

結局、私から離れて、

「あら、ごめんなさい。お怪我は無かったかしら?助けて頂いて、重ね重ね有難うございます。では、失礼!」

私はスマホを拾って、そのまま行こうとした。

「おい、ちょっと待て」

まだ、何か毒吐くんかい!

「自分の落としたスマホは拾って、俺があんたを受け止めて、落としちまった吸いかけのタバコはそのままだなんて。あんたソレに関しては何とも思わねぇのかよ」

ムムムッ!喧嘩売ってきやがったな、コイツ!!

「拾えってか?ねぇ、拾えってか?!」

ちょっといい加減、コイツの言い回しに、露骨だけど私もムキになって見上げた。

「拾えばいいんでしょ!」

私はタバコを拾って、コイツの目の前で握り潰してやった。

「どうも、アリガトウゴザイマシタ!」

「いいやぁ、別にぃ」

いやらしい言い方だな、本当にもぉ!

「弁償します!次の時に一箱お渡しします!」

「あぁ、そぉ~」

半笑いしてやがる。

クソムカツク!
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