恋愛メンテナンス
カタン…カタン…カタン…

階段?

ゴロゴロ…ゴロゴロゴローッ…

誰かが上がって来る足音と。

カミナリの音が、近付いて来るのと同時進行。

私の部屋を通り越して、

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

連続でわざと、しつこく押してる…。

怖っ…誰よ?

扉が開く音がして、私はそれと同時に自分の玄関の扉を、少しだけ静かに開けて見る。

「なんすか…」

ピカリと夜空が光る。

後ろめたい顔をしながら、ムスッとしている202号室の住人が出て来る。

ゴロゴロ…ゴロゴロゴローッ…

カミナリ様が空を重たく響かせるように、

「なんすかじゃないだろ。時間帯考えろ。ガタガタうるさくって、明日早いのに眠れやしねぇ。おまえらだけが、ここで生活してる訳じゃないんだぞ」

ピカリと稲妻で光るは、仁王立ちの…。

な、永田さん?!

「そらぁ、どうも、申し訳ないっすね」

真剣な眼差しを送る永田さんに対して、視線をそらして遠くを向く若僧。

私には分かった。

やましいから、視線をそらすんだって事。

嫌な奴だねぇ。

「謝って欲しくてねぇ、こっちは言ってんじゃないの。だいたい1LDKのこんな狭い部屋で、何人で住んでんだぁ?あんたら若いし常識を知らんようだから、いい機会だから教えてやるけどねぇ。こういう間取りの部屋は、単身者が住むための構造に元々なってんの。家族が出来たなら、もっと部屋数の多い場所に越せよ」

腕を組み直して、それでも永田さんは若い男を、強い眼差しで見つめていた。

「そこまで他人に言われる筋合い、無いと思うんすよね…」

ったく、何なのコイツ!(怒)

注意受けてる奴は、黙って聞けよ。

これだから、ゆとり教育の世代ってダメだなんて言われるのよ!(怒)

間が少しだけ空いて、稲妻とカミナリの音が轟いていた。

そして、

「それでも他人が言うって事は、それだけあんたらが、その他人に相当なまでの迷惑行為で、影響を及ぼしてるから言われちまうんだぞ?」

永田さん…。

何で、こんな逆らって来る奴に、そんな優しい言い方すんの。

私は、ギュッと胸の辺りでゲンコツで握った。

殴りてぇ…。

「何なら住居契約規定書、持って来て見せてやろうか?単身者の間取りでぇ、3人で住むとなぁ、契約違反で強制退居させられる。そういうの見て、いつ誰かに突っ込まれてもいいように、キチンとしておかなきゃ、あんたは家の責任者として失格だよ」

永田さんはそう言って、表情一つ変えないで立ち去った。

そんな迷惑な人間に、フォローなんて要らないってば…。

そう永田さんに、どうしても言いたくて。

私の部屋の前を通り過ぎるタイミングで、私は玄関を開けた。

「永田さん…」

声を掛けて見上げると、

「なんだ、まだ起きてたんか?」

< 20 / 100 >

この作品をシェア

pagetop