恋愛メンテナンス
clean 10 サタン副所長様
無事、私は清掃会社の採用連絡を貰って、月曜日から最初は4時間の見習い勤務として働く事になった。

正真正銘の所長さんと、挨拶を交わして。

永田副所長さんが、あのエメラルドグリーンの作業服を持って来てくれた。

事務員のオバチャンに付き添われて、作業服に着替える。

やぁ~ん☆

ついに着ちゃいました。

この可愛い作業服。

着てるだけで、すっごい仕事してるって感じがするなぁ。

「小さい?サイズ大きい?」

「大きめの方が、きっといいですよね?」

「裾直しは、自分でやってね」

「はい」

鏡の前で一回転して見たりして。

「若いから可愛いから大丈夫だよ」

だから若くないってば。

事務所に戻ると、

「おぉっ、いいじゃん最高!」

「似合ってるよ!」

準備をしながら、まだ20歳くらいの若い男の子2人に誉められる。

照れるなぁ…。

「こら、おまえたち早く現場へ向かえ。信用に関わる」

永田副所長は、私の前で仁王立ち。

「はい、すいません」

「じゃあ、ビル清掃行って参りまーす!」

やっぱり人相悪いから、怖がられてるんだぁ。

「今の2人が、この営業所で一番若い奴ら。それから固定で、近くのマンションの清掃に行ってる2人の50代のオバチャンたち。夜勤専属の40代のオヤジたち。そして俺と所長。事務員さんで、この営業所は回ってる」

永田副所長どのは、私に親切に教えてくれた。

「美空さんには、3ヶ月は試用期間って事で、一先ずは掃除の基本として、自分なりにこの事務所をキレイにして欲しい」

「えっ?」

「ここをキレイに出来ないんじゃ、外には出せられないからな」

「は、はい…」

結局私は、事務所の中で働く事になりそうだな。

女だから?

「所長、じゃあ俺も出て行きます」

「はい、行ってらっしゃい」

私は急に心細くなっちゃって、静かに事務員さんに渡された雑巾で、机の上やテーブルを拭く。

おまけにトイレも流し台も磨く。

駐車場や入口も履き掃除。

それからゴミの片付けも。

お茶くみと、事務員さんの書類のお手伝い少々。

「4時間しっかり掛けて掃除してね」

だなんて、言われて意外と疲れる。

3日くらい過ぎて、仕事が終わった夜。

永田さんの部屋のインターホンを押す。

「美空です」

扉を少しだけ開けて、

「なんだ?」

「ちょっとだけいい?」

永田さんは扉を大きく開けて、また私の袖を摘んで中へと入れた。

「疲れてんだけど」

腕組みをして睨まれた。

「私って雑用やらされてない?」

「あぁっ?(怒)」

「3ヶ月の試用期間中、ずっと雑用やらされんの?私は。4時間もあったら事務所の掃除だなんて、あっという間に終わっちゃうんだけど」
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