恋愛メンテナンス
コイツ、毎日ムッツリしてるから機嫌良いとか悪いとかの変化なんて、全然見分けが付かないんだけど。

若気のいたりって恐ろしいね。

こうやって永田さんも、何気に若い子に弄ばれてるんだぁ。

1ヶ月が過ぎて、物静かな所長さんが、

「そろそろ美空さんの歓迎会、開いてあげましょうかね」

永田さん目掛けて言った。

その言葉に一番喜んだのは、オバチャンたちと若い男の子たち。

「幹事、よろしくね」

所長に頼まれて、永田さんってば苦笑いしてる。

おい、何で苦笑いなんだよ!

夜勤の人も、マンション清掃のオバチャンたちも都合を合わせて、飲み会をやってくれるらしくて。

たかがアルバイトなのにね。

なんとか、1ヶ月はもって良かった。

素直に嬉しいし、楽しみだな。

家に戻ると、隣りから物音ひとつしない。

夕方に偶然、103号室のお爺さんに会って教えてもらう。

「まぁ、わしの遠い耳でも聞こえとったくらい、うるっさかったもんねぇ。昨日の朝、一気に荷物を運び出して越して行ったわい」

「そっかぁ」

「賑やかいのは悪くはないが、そうでない静かなのがいい人も居るからねぇ」

「はい」

すると、駐車場に車が止まった。

永田さん…。

降りて、カバンを肩に放り投げて車の扉を閉める。

「兄ちゃん、おかえり」

お爺さんは陽気に声を掛けた。

ペコッと頭を下げて、すぐに部屋の中へと入って行った。

「なかなかの男前じゃな」

お爺さんは関心していた。

あんなに無愛想で毒舌なのに。

どうして、そんなに人から好かれちゃうんだろうね。

隣りが静かになって、今度は真下が気になり始める。

着信の音。

「もしもし?…あぁ、じゃあメシでも食うか。また着いたら着信くれ」

永田さんの低い声が下からした。

メシでもって…。

誰かとご飯食べに行くんだ…。

気になる。

意識しちゃう。

ダメダメ!私のモノじゃないんだから、無視しなきゃ。

って、結局誰と食べに行く約束したんだよ。

もぉ…。

こんなだったら、まだ隣りがうるさい方のが良かったかも。

シャワー浴びてる…。

シャワー浴びて、身ぎれいにして誰と会うの?

…女かぁ?!

未練がましく奥さんかぁ?!

いつまで夫婦ごっこ、やってんのさ。

早く別れろ!

私は部屋を行ったり来たり。

布団に横になると、もろ下の音が聞こえるから…。

余計に気になる。

余計に意識しちゃう。

今からどこ行くのよ!

私には、

「疲れてるんだけど」

ってマネして言ってみたけど。

ぬわぁ~んだとぉ?!

コノヤロー!
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